三桃シ倒語の日記

お前の枠にはまってたまるか

『実践型レファレンス・サービス入門』

このブログで何度か取り上げている「レファレンス」とは、A. L. A. Glossary of Library Termsによれば

利用者が、情報を入手したり、また研究・調査のために図書館資料を利用する際に、利用者に対してなされる援助に直接関わる図書館業務の一面をいう。 

 

もっとざっくりと、簡単に言えば、「調べ物相談」である。

 

1995年に富山県の図書館で利用者を対象に実施されたアンケートによれば、レファレンスサービスの利用経験が「なし」と答えたのは78.4%に及ぶ。利用しない理由として「レファレンスサービスを知らない」(55%)、「レファレンスサービスは不必要」(36%)、「レファレンスサービスは面倒」(2%)。しかし、実際に利用した経験の「ある」人(13.8%)の評価は「回答に満足」が85%に及ぶ。

つまるところ、「認知度は低いが利用した時の満足度は高い」のがレファレンスサービスである。

 

私がレファレンスサービスに注目し始めたのは司書課程がきっかけである。今の時代、ネットで「ググる」なり「wikipediaを参考にする」なり、資料としての評価が芳しくないネットを情報源にする風潮が強い。本書においても、レファレンスサービスの実施における注意点で、それと類似した指摘をした、利用者の発言が引用されている。

 

「コンピュータ依存症にかかっていないか。機械に入力してある分類・件名でわかることは本に接近する手段のごく一部。多くの図書館でディスプレイに出る表示が、あきらめさせ追い返す道具になっている。本そのものにあたって探す姿勢を失っていないか?」(鈴木由美子氏の発言, 1996. 6. 29)

 

レファレンスサービスは、情報が氾濫する現代だからこそ資料検索の専門家たる司書に求められるスキルの一つと言えよう。

 

本書に掲載された、詳細な回答プロセスが描かれたレファレンス事例の数々は、レファレンススキルを磨く図書館関係者のみならず、勉学に追われる学生や研究者が文献を探す際のヒントになる可能性を秘めている。はずである。

 

実践型レファレンス・サービス入門 (JLA図書館実践シリーズ (1))

実践型レファレンス・サービス入門 (JLA図書館実践シリーズ (1))