夜を歩く事が多くなった。
実家にいる時はさすがに無理だし、大学時代の下宿周辺は灯りが少なく歩くのは不向きだった。
それでも、たまに京都の三条・四条で夜通し飲み明かし、始発を待つ間、コンビニでも発売されているかのラーメンの香りに惹かれながら、ありふれた牛丼に誘われながら、薄暗い道やアーケードをほどほどの警戒心で歩く事が多かった。等間隔で並ぶカップルのいない、静かなせせらぎの鴨川をぼんやりと見つめるだけで、無心になれた。
就職して住み始めたここでは、少し古びた店々が夜になると一気に輝く。
「行きつけのお店」がない、専ら一人で宅飲みする私には眩しい。
どこぞのスナックから聞こえる、酔いの混じった歌声を聴く度に、私の知らない楽しい世界があるのだとしみじみ感じる。
夜は寝るものなのに、みんないつしか寝る時間すら惜しくなっている。
何も考えることのなかった小学生の頃、夜の9時には寝ていた。
あの頃は、1日があと3時間で終わるとは思わなかった。