あなたは図書館をどのように利用しているだろうか。自習室としてか。資料の閲覧・貸出サービスのみの利用に留まるか。あるいはレファレンスやILLといったサービスを利用してとことん資料を探しているか。
本書では、かつて大量の副本により「無料貸本屋」と揶揄された公共図書館の今後の方針について、全国各地の図書館を取り上げながら説明している。
著者は新聞記者ということで、なるほどフットワークも軽く情報網を活用して多くの図書館を取材している。自分のかつての実習先である図書館も取り上げているので、少々嬉しい。
住みたいと言われるほど快適な武蔵野プレイス、「日本一の県立図書館」と称される、ビジネス支援の盛んな鳥取県立図書館、財政対策により運営の見直しが検討され、市立図書館と併せて「二重行政」と捉えられる神奈川県立図書館……個性の強い図書館のみならず、自治体との折り合いが問題となっている図書館についても取材されているので、明るいだけではない公共図書館の現状を知る事ができる。
特に佐賀県武雄市の所謂「TSUTAYA図書館」については多くのページが費やされている。武雄市立図書館の話題は図書館界隈でセンセーショナルに取り上げられており、指定管理者制度の在り方や、CCCの個人情報の取扱いと従来の図書館の方針の食い違いについては度々論題となった。
私の地元の近くにある自治体もCCCを指定管理者とした図書館を新設するとの話があり、一図書館利用者として、一司書資格保持者として、もはや「TSUTAYA図書館」は他人事ではなくなる。武雄市にはいずれ「視察」に訪れようと思っている。百聞は一見に如かず。自分の目で確かめて率直な感想を述べたいところだ。
本書で取り上げられている図書館のなかで私のお気に入りは、島根県海士町の図書館である。施設ではなく「島全体を図書館にする」という大胆な発想が、地方都市の図書館とは異なる魅力を生み出している。こちらも機会があれば「視察」に行って、島まるごと楽しみたい。
新しく生まれる図書館もあれば、今後は大人の事情で消えていく図書館も目立つのかもしれない。大阪府立中之島図書館の閉館が検討されたように、公共施設と言えど図書館も「消えていくもの」の例外ではなくなってしまうのか。私は、図書館は「消えてはならないもの」だと思う。利用者を選ばない知のセーフティネットたる役割を担う図書館が消えてしまったら、私達の生活は文化的なものとは遠くなってしまうのではなかろうか。
生き残りを賭けた決断は静かに迫られている。あなたの近くの図書館は、どうだろうか。
つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)
- 作者: 猪谷千香
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/01/07
- メディア: 新書
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